シンガー・ソングライターの森田童子さんが、
4月24日に心不全で死去していたことがわかった。
65歳だった。
米朝会談のニュースばかりの中、突然入ってきた訃報に驚いた。
何から書こうか悩む。
1993年のTVドラマ「高校教師」で彼女の曲が使われていて、ものすごく驚いた。
TVという超メジャーな媒体では流れることはない、
決して日の目を見ることのない音楽だと思っていたのに。
それがゴールデンタイムのTVから突然流れたのだ。
まるで隠しておいた自分の秘密を公然と暴露されたような感覚。
ドラマ主題歌が思いがけずに再?ヒットして、若い子たちが屈託のない顔で、
「は〜るのぉ木漏れ日のぉ中で〜」とか歌っているんです。
いや別にいいんですけどね、違和感ありまくりでした。
だってそれまで「森田童子のファンです!大好きです!」とは誰も言わなかった。
なんと言うか、そっと心の奥の「闇」の中にしまっておくような存在。
カラオケにあったとしても誰も歌わない。誰かが歌っているのを聴いたこともない。
ご承知の通り、森田童子さんの音楽の背景にあるのは紛れもなく学生運動。
本人も語録の中で「参加した」とありましたから。
歌詞の多くに学生運動の果てに挫折した若者の姿が描かれている。
どうしようもない虚脱感とか敗北感とかが支配している。
思想的なものに関係なく、森田童子さんの音楽に惹かれたのは独特な世界。
誰でも若いときって、閉塞感や孤独感に苛まれること、あるでしょ?
(そんな経験がない人も、いるかも知れないけど)
そんなときに聴くと心の隙間に染み入ってくるんです。殻に籠れます。
消え入りそうな儚さもある歌声、でも時にすごく優しい気もする歌声
ときにメジャーコードに悲しい歌詞を乗せてきたり、不思議な音楽ですね。
歌詞には「挫折」や「死」を連想させる部分も多い訳ですが、
聴きながら「いや自分は別に死にたい訳じゃねーよ!」と死に対しては否定的でした。
聴いていた当時はハタチ前後で、いくら孤独でも失敗続きでも悩みが多くても
夢や希望があったから。
何の根拠もなかったけど、「未来は明るいに決まっている」と思い込んでいました。
どうしようもない不安感に襲われる歌詞と戦慄のナニコレな効果音「地平線」
今だったら放送禁止かも?「さよならぼくのともだち」
メルヘンチックだと思っていたら引きずり降ろされる「雨のクロール」
なぜ観光バス?散々考えたけど答えは分からない「ぼくと観光バスに乗ってみませんか」
男でも泣いてイイんだ!と思った「男のくせに泣いてくれた」
思わずミドリちゃんのことが心配になってしまう「セルロイドの少女」
森田童子さんって菜の花好きだよね「菜の花あかり」
夢から覚めた心地悪さ「みんな夢でありました」
生で歌を聴く機会がなかったのが残念でした。
「たとえばぼくが死んだら そっと忘れて欲しい」と言われたが、
忘れることなんかできない
さよならぼくの森田童子